CoCシナリオ制作、こわくない。

世界一ちゃんとしてないCoCノウハウ帖 〜 当て書きのすゝめ 〜

【はじめに:この記事はこんな人向けです】

CoC(クトゥルフ神話TRPG)シナリオを書いてみたいけど、ハードルが高いと感じており、最初の一歩を踏み出せずにいる
・最初の一歩は踏み出せたけど、完成にこぎつけるためのヒントが欲しい
・シナリオを書く人の頭の中を覗いてみたい
「そういう例もあるんだな……」のそういう例を知りたい

 

なんか…… あらゆる制作を感覚的にやっているので、だいたい「やったらできた……」「気が付いたら、完成してた……」という感じなんですが、「一度ノウハウをまとめたほうが自分の為にもなるのでは?」と思い、某AIくんに相談したらベタ褒めされた上に制作フローがまとまったので、備忘録的に残しておこうと思います。ついでに私がよくやってる「当て書きスタイル」の布教ができたら嬉しい。
みんなもっと気軽にシナリオ作ったり回したりしたらいいと思うんだよな。これはそんな記事です。

 

【導入:何の/誰のために書くか?】

動機ですね。私の場合は「シナリオ、書くか……」と思っている時点で、ターゲットが明確なことが多いです。たいていの場合、必要に駆られて書いています。書き始めている時点で「うわあああシナリオ書かなきゃ!!!!!」の状態です。
この時点で何が起きているかというと

・既にターゲットと締切が決まっている

なんですよね。ここで既にケツに火が付いています。完成図が見えていないままプレイヤーさんを捕まえて、予定の確保をお願いしてしまうのです。

これについては、私の方からお声掛けすることが多いです。「この探索者さんに向けて、こういうシナリオが書きたい……」と感じた時に、予定が確保できそうであれば、わりと衝動的に。
きっかけは、過去にご一緒したセッション中のやりとりであったり、プレイヤーさんの「この探索者、動かしてーな……」という呟きだったりと様々です。何気ないコミュニケーションの中にきっかけは落ちています。

最初から来る探索者が決まっていることのメリットは大きく、探索者の背景や、得意な技能や、人間性が分かっていることは、執筆のハードルを下げる助けになってくれると思います。
「推しが私の卓に来る!!!!!!」という動機バフが掛かるのも大きいです。推し探索者の物語を自分の手で作っていいんですよ!これって凄いことじゃないですか……!?
ターゲットとなる探索者さんを先に決めてしまい、その探索者さんのためにシナリオを書く……個人的に「当て書きスタイル」と呼んでいるんですけど、これマジで楽しいので全力でおすすめしたい。ぶつけたい神格や神話生物を叩きつけたり、「この探索者に、これをやってほしい……!」「こういう舞台に立って欲しい……!!」を一から考えて組み立てて、御本人にぶつけられるんですよ!これって最高の遊びだと思うんですよ……!!

 

【シナリオ背景:まずは舞台から】

ビジュアル先行型なので、場所から決めるとやりやすい気がする。なので最初の方で決めてしまいます。
シナリオ制作導入の時点でターゲットは決まっていますので、「この人にこういう場所に居て欲しい」「こういう情景が似合う!」ということを考えつつ、舞台を考えます。多少無理のある設定になりそうでも、「ここに立って欲しい……!」を優先させることが多いです。辻褄は後で合わせます。なんとかします。ど〜〜〜〜してもなんとかならない時は、また舞台から見直せばいいだけです。
「現実世界か、そうでないか」も同時に考えていきます。現実世界でない舞台の例としては、夢だったり、VR世界だったり、はたまた精神世界であったり、でしょうか。
現実もすばらしいですが、異世界も出来ることが多くてめっちゃ楽しいと思っています。たとえば、「この探索者に重火器で大暴れして欲しい…」と思った時に、現実世界では法律の壁が立ちはだかりますね。しかしVR世界なら法も関係ありません。スプ◯トゥーンを遊んでも銃刀法違反に引っかかりませんよね。
現実世界も大好き。探索者さんの現実を脅かしたい……。生活に根ざした様々が垣間見えると嬉しいですね。

舞台周りが決まってくると、登場可能な神話生物やクリーチャー、NPCの傾向などもある程度絞られてくるので、考えやすいと思います。ルールブックやサプリメントを参照しつつ、使えそうなネタを思いついたら片っ端からメモしていきます。このメモが未来の私を助けてくれることもある。これはマジです。

メモの形式は何でも良いと思います。個人的には四つ折りにした紙とペンが好きです。スマホやPCを使える環境の時は、Discord内に作ったメモ専用鯖に書き込むこともあります。
最近のメモには「《神話技能》が高いと失敗する?」「草木に覆われたラボ」「NPCは車椅子→移動に制限あり」「タワーディフェンス?」「たたかう・かくれる・にげる」とか残されていました。このメモを書いた時点ではストーリーラインも浮かんでおらず、断片しかありませんでした。ですが、これらの断片がぴたりと嵌ることもあるんです。

 

【シナリオ背景:神格やクリーチャー、どうやって決める?】

やりたいお話から逆算して採用することもあれば、先に神格やクリーチャーを決めてしまってそこからお話を考えることもあります。どっちでもいいと思う。

ルルブもサプリも面白いダイスゲームの宝庫だと思いますので、じっくり読み込む時間が取れたらいい。公式さんから出ている資料の数々って情報量が膨大なので、興味のある所から読んでいます。全部は読めていませんし、過去に読んだ箇所も全部は覚えていないです。
私はルルブやサプリを読む時に蛍光ペンでバチバチに光らせてしまうのですが、特徴的な描写は青色、ダイスゲームに使えそうな部分はピンク、何かの攻略の足がかりにできそうな部分は黄色と分けて、参照しやすくしています。忘れちゃっても、ぱっと開いて振り返ることができればそれでいいんだ。もっとマーカーライン箇所増やして最強のツールにしたい。

せっかく来る探索者さんが決まっているので、なんかこう……マッチしそうな神格やクリーチャーをあてがえたら最高ですね。過去の例をいくつか挙げるんですが、天才メカニックの探索者にチクタクマンをあてがい、「あなたのメカは神に目をつけられた」という実績を与えるだとか、触手にトラウマを持つ探索者のために、「触手の塊」と描写されているウラフティを採用したりとか、そういうことをやっていました。
クトゥルフ神話の神格やクリーチャーはみんな個性的で、強烈で、想像を掻き立ててくれるものばかりです。やりたいことにぴたりと嵌るとそれだけで物語になるので、扱っていてとても……楽しい!!

 

 

【本文:……ってどうやって書く?】

ごめんなさい、ここが一番言語化が難しいです。「書いたら書けた……」の部分ですね。
私の場合、構成を100%決めないうちから書き始めてしまうことが多いです。頭に浮かんでいるビジョンを元に、探索者に体験させたいこと、謎や課題に対してどういったアプローチをさせるか?ということを、片っ端からテキストにしていきます。
書きながら決めている部分も結構あります。これまでに考えた真相についても、「これって実は、こういうことなんじゃないの……?」と思いついたらバンバン更新してしまいます。辻褄は後で合わせる(口癖)

あまり良くない例だと思いますが、この時点で既に作業に充てられる日数がそんなに残っていない、というパターンが多く、だいたい時間に追われています。直近のダメな例を一つ挙げるんですが、セッション当日にシナリオ本文を書き始めたことがあります。セッション開始が21時だったのですが、朝起きた時点でシナリオは白紙でした。幸い休みの日だったのでそれまで書き溜めたアイデアメモをかき集めつつ結構必死でまとめました。取ったメモの数々にはかなり助けられました。

「一度時間を置く」ことで展開が浮かんだり「ここの部分はこうした方がいいんじゃないか……?」というような閃きが発生する場合もあるので、ある程度余裕を持ったスケジューリングを取ったほうがいいとは思います。とはいえ時間は有限なのでできる範囲で。ね!

 

【ギミックの話】

ダイスを使ったギミック、楽しいですよね。私はダイスが転がるだけで楽しい。せっかくTRPGをやるんだから、たくさんダイスを転がして欲しいし、その結果に一喜一憂して欲しい!!ダイスロールがドラマを生むって公式さんも言ってるし、大量のダイスって正義なんじゃないか(※諸説あり)

たとえば過去のセッションでは「指定のダイスロールに成功するたびにポイントが溜まり、そのポイントで探索者の強化できる」、ダイスを振れば振るほど強くなるゲームをやったことがあります。これは「カービィのエアライド」の「シティトライアル」というモードから着想を得ていて、時間内にマシンを強化して最終戦に臨む、という遊びが面白くて何百時間とやり込んだ経験があるので、「これをダイスゲームに落とし込めたら面白いんじゃないか……」って思ったんですよね。
完成したものは「シティトライアル」とは違うテイストになってしまったんですが、プレイヤーの皆さんには大量のダイスを振らせることができ、めちゃくちゃな強化を積んだ探索者で大暴れしてもらえました。やったー!

 

【セッション準備は同時進行】

たいていの場合、間近に迫ったセッション当日のためにシナリオを書いているので、シナリオテキストを書きながらセッションに使用する画像や、音源の調達を行なっています。マップ画像を作ったあとにシナリオテキストを読み返して違和感がないか確認したり、マップを見て必要な描写を足したりすることもあります。テキストを足した後にマップを書き換えることもあります。無限機関になってしまうこともありますので、いいところで切り上げます。妥協も大事!!!!!!

作成した画像の例。伝われ〜!!と思いながら作っています。概ね意図は伝わっている気がします。

【どうしよう、おそろしく進まねえぜ……!という時にできること】

怖い話なんですけど、あるあるなんですよね。セッションまでもう日がないのに、行き詰まってしまって何も浮かばねえ……って時。セッション当日の午前中に進まねえモードに入って絶望した経験、一度や二度じゃないです。そんな時にできることって……

▼探索者さんを見る
あ〜〜〜今日も面がいいな。それでもいいんだけど、もし過去に同卓していたらセッションログを見返してみるだとか、そもそもどういう動機でこのシナリオ書き始めたんだっけ……って所まで振り返るだとか、プレイヤーさんとのやりとりを読み返してみるとか。提出していただいたキャラクターシートを一旦じっくり見てみたりだとか。するとそこにヒントがあることも……ありました。

▼プレイヤーさんを見る
遊びに来てくれるプレイヤーさんが「苦手な要素」を入れない……これすごく大事です。私は3回くらいやらかした後に学びました。逆に「好きな要素を入れてあげる」もできますね。眼鏡のキャラが好きなプレイヤーさんのために眼鏡をかけたNPCを用意するとか、セッション日がプレイヤーさんの誕生日だったらセッション内でお祝いしてしまうとか……。こういう企み、すごく楽しい。

▼とりあえず、やらせたいことを書き出してみる
「スーパーに牛乳買いに行って欲しいな……」、とか。ちいさい欲でもいいと思う。こういうのをちょっと膨らませて「牛乳買いに行く途中で食屍鬼と鉢合わせてしまったのでなんとかする」みたいにするだけでも、立派なシナリオじゃんね。

▼BGMを探してみる
合いそうなBGMを探しに行ってみるとか。好みの作曲家さんが見つかると好みの曲にたくさん出会える気がします。「これ聴きながらだと執筆が捗るぜ!」という曲、セッション当日に使用しても違和感がないことが多いかも。
そういえばBGMの調達って、セッション中とっさに行なうことが難しいよねって話聞いたな。音周りは凝りたかったら優先度上げて良いかもねって思います。

▼探索用マップを書いてみる
ビジュアル先行型なんですよね。なので先にマップ画像を作ってしまうのも有効でした。紙とペンでイメージを膨らませた後、クリップスタジオペイントでマップを作る。できたマップを辿りつつ、探索者さんの目線になって「今から君はこういう体験をするのだ……」という感じで要素を増やしていく。

▼一旦ゲームする/読書をする
やろうとしていることのイメージに近い作品があれば、現実逃避の末にヒントがあることもあるでしょう。かつて私がシティトライアルに助けられたように……。ただしご利用は計画的に(自戒)。

▼一旦お風呂に入る
入浴中にネタが浮かぶこともあるが、この効果を最大限得るためにはコツがいる。「既に執筆のことで悩み散らかした後」でないと降ってこない天啓もある。なんか、一旦アイデアを寝かせるとか、そういうプロセスを経ておいたほうがいい。詳しくはこの本を読むといいかもしれない。
参考になりそうな本 ▶ https://amzn.asia/d/dFPTOGT

▼メモを読み返す
雑然としたメモ郡が、執筆を助けてくれることもある。とりあえず全部読み返してみよう!使えるものは全部使っちゃえ!

 

【執筆及び準備、どこまでやる?】

「これだけの準備があればシナリオ回せるわ」って思えるまで。あるいはタイムリミットが来るまでですね。前者が理想ですが、圧倒的に後者の方が多いんですよね。
言い換えると「いける所まで」となります。だいたい時間が足りないから「こういう場合こういう処理にするといいかも!」みたいな、進行メモになっちゃうんですよね。でもセッションが回ればいいか…… 一番の目的はセッションを回し、プレイヤーさんに楽しんでもらうことだし。

「いっそ、アドリブで回すか……」も、決して諦めではないのです。
TRPGって生き物だと思うんですよ。プレイヤーさんとの対話によって、セッションのありかたは大きく変わるものです。つまり余白を残しておくということは、自由に動いていいんだというメッセージなのです。たぶん。
最初からラストまで全部きっちり決めないほうが、柔軟に構えられることもありますからね。自作のシナリオなら、自分が一番メチャクチャな回し方、できるし……!!

こういうことをやっているとアドリブ筋みたいなものは鍛えられると思う。何度か大失敗することで「私はどの程度の準備をしないといけない」みたいな最低準備ラインを知ることもできるので、えーと……。失敗させてくれるプレイヤーのみなさん、ほんとうにありがとう!!!

 

【おわりに】

たぶん、みなさんシナリオ執筆のハードルが高いと思うんです。ちょっとBOOTHやTALTOを漁れば、概要からして面白そうなシナリオ、完成度の高いシナリオがたくさん見つかりますもんね。

ですが、断言します。それらと比較して「私のシナリオなんて……!?」と思う必要はありません。
だって当て書きシナリオって超うれしいじゃん!!!!!!!!!!私がプレイヤーの立場だったら絶対そう思うし、私のためにシナリオを書いてくれたことを一生誇るよ。もし当て書きでなくても、オリジナルシナリオを回してくれるのって……うれしいじゃん!!!!!!!!!!!!!!!

だから、みなさんも恐れずにガンガン筆を取ってほしい。

シナリオは回してこそ完成するものだと思いますので、「セッションの中で完成させる」くらいの気持ちで良いと思います。半分用意して半分はプレイヤーさんに委ねちゃう、くらいでもいいと思います。プレイヤーさんを信じろ!!きっと想定以上にセッションを面白くしてくれるから……ッ!!
プレイヤーさんってすごいんだよ!!私も忘れられないセッションがたくさんあるよ!!シナリオを回したときにプレイヤーさんが神ムーブをしてくれて、「ああ、あの伏線って……この為のものだったんだ!」って感動したことも……あるよ!!

なので、絶対にちゃんと100%完成している必要も……ないんじゃないかな……!?なんか……めげそうな時は、この記事くらいちゃんとしてない例も、あるんだな……と思い出してくださればとても嬉しいです。すべてのシナリオ書きさんに光あれ。